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高等特別支援学校の生徒さんへ性教育の授業をしました

こんにちは。NPO法人HIKIDASHI代表の大石です。

7月と9月の2回に分けて、神戸市西区にある西神戸高等特別支援学校の1年生の生徒さんに性教育の授業をさせていただきました。

 

高等特別支援学校は、知的障害のあるお子さんの中で、一般企業への就職ができる可能性が高い生徒さんが通われる学校ということで、この学校の生徒さんたちも卒業後の就職に備えて日々勉強や実習等を頑張っておられるということでした。

 

そんな生徒さんたちが、性についてきちんと知識を持たないままに社会に出て、傷ついたり傷つけたり、せっかく就職をして頑張っている中で予期せぬことが起こらないように、何とか必要な知識を与えておきたいという先生方からの切実なお気持ちからご依頼をいただき、

事前に綿密な打ち合わせをしてから授業に臨みました。

 

まず1回目は、主に第二次性徴について。
みんなの体が今どういうふうな変化を遂げているのか、特に月経や射精が起こるとはどういうことなのか、その機序等を丁寧に説明した上で、体はすでに生殖能力を持ち始めているということを認識できるようお話ししました。

そして、受精に至る過程、性交についても説明した後に、

プライベートゾーンや境界線、NOということ、同意についてもお話ししました。

 

授業の後、生徒さんの感想、先生方の感想、それぞれを読ませてもらったところ、やはりもともと少し知的に遅れのある生徒さん達であり、興味や理解度も個人差も大きい中で、もう一度しっかり押さえておいた方が良いなということがいくつも見えてきました。

 

更には、やはりいつか誰かと性的な関係を持ちたいと思うのは自然なことで、でもそんな中でも、きちんと知識を持たないことによって予期せぬことが起こらないように、交際や避妊、性感染症等についても伝えておきたいということになり、2回目の実施が決まりました。

 

1回目から2か月後、夏休み明けに会った彼らは、1回目の授業について結構忘れているような印象だったので、1回目のおさらいもしながら、

人を好きになるとは?交際するとは?

愛の12段階や性的同意についてもお話しした上で、避妊や性感染症予防についてもお話ししました。

 

コンドームについては、言葉だけではなかなか理解しづらいのでぜひ実物を触らせたい、とのご意向で、

まず私から、コンドームの使い方のポイントについて伝えた上で、
一人一人に配布して、実際に触って指に装着するという体験を取り入れました。

性感染症についても、知らないうちに感染が広がっていくかもしれないことを体感してもらえるよう実験を取り入れました。

 

生徒さん、先生方からの感想をご紹介します。

【生徒さん】
◆人との距離を考えたり、同意を取ること、あらためてわかりました。自分のことが好きであの人のことも好きになったりするのは、恋愛だなと感じました。

◆自分が手をつなぎたい、色んなことをしたいと思っても自分の判断で決めるのではなく相手に同意を取ることが大切。同意の大切なポイントを教えてもらったので忘れず覚えておきたい。これから先も、お互いの気持ちを大切にしていきたいです。

◆性教育で学んだことはセックスする理由は子孫を残すことと学んだ。避妊するにはコンドームを使うと知った。同意を取って対等にしないといけないと知った。

◆コンドームを触って、手が臭かったし、気持ちが悪かった。人間の体ってこんなんなんだと思いました。

◆卒業してからするかどうかはわからないけど、生きていくためには必要なことなので、知れて良かったと思いました。つきあっていても、するかしないかは、自分で考えていきたい。

◆初めてコンドームを触ってみて、ぬるぬる感が気持ち悪かった。性交の罪があるんだと知りました。

◆コンドームをしていても100%避妊できるわけじゃないし、100%感染しないことはないとわかった。

◆これからもお互いの気持ちを大切にし、今の自分たちにとって大切なことは何かを考えていこうと思う。前回も含め、あまり聞くことのない性について知ることができて良かったと思います。

◆自分がよくても相手が望んでいなければ、やめた方がいいと思えた。自分と相手でこれからどうしていくのか、何をしたいのか(一緒に遊ぶ、食事に行くなど)をきっちり話しておいた方が良いと思いました。

◆一番勉強になったのが、コンドームの使い方と性病について深く勉強になりました。今までコンドームというのは知っていたけれど、使い方自体は知りませんでしたし、性病を実験を通して性病の怖さを知れました。

◆テストステロンとか、愛の12段階とか、刑法改正とか、知らないことを知れてよかったです。いくらコンドームをしても、妊娠や性感染症などを100%防げるわけではないということが自分的にわかりました。

◆今回の性教育で精子と卵子を会わせないようにする道具があることを知りました。

◆好きな人でも友達でも、ちゃんと同意をとって、急に距離を縮めるんじゃなくて相手の気持ちを聞いて、考えて適度な距離でかかわっていけたらいいなと思いました。

◆個人的に怖い。性交するための理由やリスクなどを今日学習できて良かったけど、そおゆうのを深く考えれば考えるほど、少し怖いと感じた。コンドームという物は聞いたことがあったけど、精子と卵子が出会うのを防ぐ!という役割があるのを学習できて良かったと思った。これからは、自分の関わりのある人に対してよく考えて関わろうと思った。

◆今まで知らなかったことなどがわかったので良かったと思いました。相手の同意が大切だとわかりました。これからの人生で彼氏ができても、今日学んだ同意のことや、性行為の事などを忘れずに今後の生活などに役立てたいと思いました。

◆一番印象に残ったのは、お互いの気持ちを、ことばで確認、むりやりに言わせていないか、対等であるか、その都度確認すること。いつ気が変わってもいいということを学んだので、相手ができたら気をつけようと思いました。

◆異性との適切な付き合い方であったり同意を取ることの重要性等、普段あまり考えたことのない事を勉強することができて良かったなと思います。性感染症の実験が印象的でした。これからも付き合い方に注意して線引きがちゃんとできるように頑張ります。

◆一人で性のことについて、とても学びたいと思いました。同意の大切さがとても分かった。

◆同意の大切なポイント ①無理に言わせていないか ②対等であること ③その都度確認すること④いつ気持ちが変わってもいい。 お互いの気持ちを大切にするというのが大事なんだと思いました。感染症などがあることを、初めて知りました。法律も不同意性交等罪に改正されているのも、初めて知りました。

 

【先生方】
🌸絵やイラストでなく、コンドームの実物を使用したことで、本校生徒にとって使用方法などが理解しやすかったように思います。ありがとうございました。

🌸講話内容は提示されている資料もわかりやすく聞き入ってしまうぐらいあっという間でした。特別支援の生徒にとってどこまで授業で話をしていくか悩ましいところだと思います。性行為はとても大切なものですが、アンケートを見ても同意を得ればOKという捉え方をしている生徒が見られた。同意の有無に関わらず高校生在籍時まではしてはいけないことの抑えが必要であると感じました。

🌸提示資料が分かりやすかったです。興味をもっているだろうと予測はできても、どう踏み込んでいけばよいのか分からない分野でもあったので、参考になりました。ありがとうございました。

🌸2回目も、たくさんの資料を準備くださったことで、生徒たちは理解しやすかったように思います。ありがとうございました。同意についてのポイントも抑えていただきましたが、2回の授業を終えてみて、同意があれば性行為をしても良いという安易な考えに結びついていないかは、やはり心配です。生徒たちは自分の体が、第二次性徴を迎え、生殖機能を果たせるようになってる一方で、知識を得て、行動をどうコントロールできるかは未知です。
保護者から「性」の話はなかなかしにくいと思います。いつか知るだろうではなく、学校だからこそできる教育の一つです。「性」の学習にあわせて、生徒たちが今高校生であること、自分の立場、経済力、社会的責任など、じっくりと考えさせ望まない妊娠を、「しない」「させない」教育をしなければならないと改めて感じました。 

 

 

正直なところ、知的に遅れのある生徒さんたちへの性教育は、当法人としてはまだまだ実績はあまりありません。

でも、知らない、理解できていないことで、その子達が傷ついたり、誰かを傷つけたり、性的に搾取されたり、せっかく築いてきた生活が予期せぬことで思わぬ方向に進んだり(もちろんその結果良い方向に進むこともあるとは思うけれど)。そうなることをなるべく避けられるように。

そして、大切な人と素敵な関係を築いていけるように。

障害の有無に関わらず性教育は必要ですし、障害があることでより個別に応じた対応が求められることだと思います。

 

「#全ての子ども達に包括的性教育を」

そのために、まだまだ実績は少ないですが、これからも生徒さんたちのために何ができるか、一緒に考えさせてもらえたらと思っています。

 

貴重な機会を本当にありがとうございました。

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